── 関与ログ ──「優しい管理職」が、是正判断を引き受けられなかった構造
この組織の管理職は、人を大切にしていた。
話をよく聞く。
状況を理解する。
感情にも配慮する。
現場との関係は、安定していた。
一方で、小さなズレが少しずつ積み上がっていく。
・成果が伸びていない
・やり方が噛み合っていない
・周囲に負荷がかかっている
気づいてはいる。
だが、是正の判断は置かれない。
当事者の認識は、こうだった。
管理職は、今は言うタイミングではないと思っている。
現場は、理解してもらえていると感じている。
経営は、現場は安定していると見ている。
どの認識にも、悪意はない。
むしろ、関係性を壊さないための合理的な判断に見える。
だが、構造として見ると、
ここでも判断は、別のものに置き換えられていた。
是正するか。
踏み込むか。
線を引くか。
その判断は、配慮や共感に委ねられていた。
この構造では、管理職の役割は次の形に最適化されていく。
・空気を和らげる
・衝突を避ける
・本人の事情を代弁する
結果として、是正は「いずれ必要なこと」になる。
判断は、未来に送られる。
時間が経つほど、是正のコストは大きくなる。
言いづらくなる。
影響範囲が広がる。
他のメンバーが疲弊する。
それでも、最初の小さな判断が引き取られていなかったため、
是正は一気にしかできなくなる。
やがて管理職は、こう感じ始める。
「ここまで来ると、自分では手に負えない」。
判断は、さらに上位へと委ねられる。
問題は、優しさそのものではない。
共感も、配慮も、マネジメントには必要だ。
ただ、是正という判断を、誰が、どの時点で引き取るのか。
その設計が、置かれていなかった。
結果として、優しさは判断の代わりを務めるようになる。
管理職は良い人であり続ける。
その一方で、組織は静かに歪んでいく。
是正が遅れた理由は、いつも事情や配慮で説明される。
だが、実際には、是正判断を役割として引き受ける場所がなかった。
それだけだった。