── 経営判断ログ ──なぜ組織は、気づかないうちに「お客様不在の営業」に堕ちていくのか

このとき、経営としては、顧客から離れるつもりはなかった。
むしろ、逆だった。

顧客に向き合え。
顧客の課題を起点に考えろ。

そのための言葉も、体制も、整えていた。
思想としては、明確だった。
現場も、顧客を見て動いているつもりだった。

だが、日々の判断を辿っていくと、別の軸が少しずつ前に出てくる。

顧客よりも先に、社内で説明できるかどうか。
顧客よりも先に、承認が取れるかどうか。

それは、誰かが顧客を軽視した結果ではない。

顧客起点という思想が、どの判断にどう接続されるのか。
その設計が置かれていなかった。

経営は、顧客に向いている組織を見ている。
現場は、顧客に向いているつもりで動いている。

その間で、実際の判断は、社内に向けて最適化されていく。

このズレは、対立ではない。
善意と合理性が重なった結果として生まれる。

だから、気づきにくい。

結果が出ている間は、なおさら見えない。

やがて、営業の現場では、顧客が話題の中心には残り続ける。
一方で、判断の中心からは静かに外れていく。

このとき、経営が見ていたのは、顧客そのものではなかった。
顧客を見ている組織の姿だった。

その一段のズレが、後から大きな歪みとして現れる。

誰かの姿勢が変わったわけではない。

判断の置き場所だけが、ずれていった。