── 関与ログ ──偶然の成功が、次の判断を壊していく構造
この組織には、一度、大きな成功体験があった。
想定よりも早く成果が出た。
難しい条件をうまく乗り越えた。
社内でも高く評価された。
その成功は、確かに価値があった。
問題は、その成功がどう扱われたかだった。
成功した理由は、後からいくつも語られる。
・判断が的確だった
・現場の動きが良かった
・チームワークが機能した
どれも、納得できる説明だ。
だが、実際には、成功の中には、一時的な条件や偶然も含まれていた。
当事者の認識は、こうだった。
経営は、このやり方が正しかったと理解している。
管理職は、成功パターンを横展開すべきだと考えている。
現場は、次も同じ成果を出さなければならないと感じている。
成功は、組織にとって安心材料になる。
同時に、判断を問い直す理由を奪っていく。
この構造では、成功は検証されない。
結果が出ている以上、止める理由が見つからない。
「うまくいったのだから、やり方は合っているはずだ」
その前提が、次の判断の出発点になる。
その結果、判断は少しずつ変質していく。
・条件が違っても、同じやり方を選ぶ
・リスクの検討が、省略される
・成功時の人物や判断が、基準として残る
案件の是非ではなく、成功体験そのものが、判断の根拠になっていく。
この状態では、失敗は説明しにくくなる。
成功したやり方をなぞっている以上、間違ってはいないように見えるからだ。
失敗は、構造ではなく、
「条件が悪かった」
「現場の工夫が足りなかった」
そう処理される。
問題は、成功を評価したことではない。
成功を、判断の代わりに使い始めたことだった。
成功は、結果であって、次の判断基準ではない。
だが、構造の中では、成功が判断の役割を引き受けていく。
こうして組織では、
・なぜ進めるのか
・どこで見直すのか
・何が変われば止めるのか
そうした問いが立たないまま、時間だけが積み重なっていく。
成功は、組織を前に進める。
同時に、判断を静かに止めていく。