「新卒社員の早期離職率」低下に成功したC社のケース | 株式会社リーディングパートナー(LEADING PARTNER)

ソリューション事例

Case study
Case study 03

「新卒社員の早期離職率」低下に成功したC社のケース

状況

多くの企業が悩んでいるであろう、新卒社員の早期離職率。3年以内に新卒社員の3割以上が離職すると言われています。

それはC社の営業部においても、例外ではありませんでした。「他にやりたい仕事ができた」「社風が合わない」など、彼等・彼女等が言う退職理由はさまざまでしたが、本音のところは『人間関係によるもの』が多くを占めていました。

私たちはまず実態を把握するため、C社の営業部における新卒社員への研修内容、業務の進め方、職場での関わり方についてリサーチしました。

課題

新卒社員を育てるための研修制度が整っていない。

人事部は営業部に新人の教育を任せて、営業部の上司は既存社員に教育業務を“任せて終わり”になっていました。つまり、トレーナーとなった既存社員に丸投げの状態。既存社員は仕事の進め方は教えられても、仕事の目的・意義までは教えられていないことがほとんどでした。そのため新卒社員は「雑務をやらされている」感覚に陥り、モチベーションが減少。忙しい既存社員はケアもできず、OJT研修とは名ばかりの属人的な状態でした。配属先によっても指導の質に差があり、全員に適切な教育が提供できていなかったのです。

職場におけるダブルバインドが発生している。

先輩や上司から「成果を出しなさい」と指示されて、経験もスキルもない新卒社員は成果を出すために時間をかけようとします。しかし会社からは、働き方改革などの観点から「時間をかけてはいけない」という指示が出ていました。職場における矛盾したメッセージ(ダブルバインド)によって、新卒社員は悩まされていました。

新卒社員を受け入れる余裕が現場にない。

バブル景気で賑わっていた時代は、会社も新卒社員に失敗をさせてあげられる余裕がありました。しかし現在では失敗は許されず、早期に結果を出すことが求められます。事実、新卒社員が配属される部署は「マンパワーが増えるから」という理由で、予算目標を上げられており、現場は余裕がなくなっていました。配属部署においては「新人を預かること=仕事が増えること」というネガティブなイメージを抱えていたのです。

配属先による教育の差、職場におけるダブルバインド、失敗が許されず早期に結果が求められる環境。
これらの状況によって、頑張っても成果を出せない新卒社員は、自分を責めるよりも次第に先輩や上司、そして会社を否定するようになりました。このようなネガティブな感染力はとても強く、それまで会社に不満がなかった同期にも疑念が広がっていき、結果的に新卒社員の離職率が高くなっていたのです。

課題解決の方向性

新卒社員が「働きがい」と「安心感」を感じるOJTスキームの構築。

各部署での取り組みではなく、会社として「OJTスキームの構築」が必要であると私たちは考えました。
人事部の新人研修と連携を行なうとともに、人員体制や経験差などを考慮した部署ごとの「新卒社員が成長するための環境づくり」に取り組んでいくことにしました。

人の成長はカリキュラム的な教育ではなく、環境によってつくられるもの。そして部下にとっての環境とは「教育係」であり「職場の社員全員」です。トレーナーだけでなく職場の全員が「自分の考え・発言や行動が、新卒社員の成長に大きく影響する」ということを認識してもらう必要があると考えました。

「新卒社員にとってどんな上司であるべきか」「周りはどんなサポートをするべきか」「新人にはどのように成長してほしいのか」ーーーバラバラだった新人教育に対する考えを整理するため、各部署の社員全員にワークシートの記載とディスカッションを依頼しました。

【 1 】まずは新卒社員について理解を深める

▼ 新卒社員の“人となり”を理解しているかを確認
配属部署ごとに、新卒社員の似顔絵、趣味や出身地などの基礎情報、強み・弱みなどをワークシートに記載してもらい、話し合います。新卒社員について知っていること・知らないことのコントラストをつけていきます。

▼ 新卒社員の状況や心情について理解
「お客様や仕事をしていく上での関係者について」「仲間・職場の雰囲気について」「仕事内容について」などを記載し、話し合うことで、新卒社員の仕事や置かれている状況を改めて理解します。

▼ 「先輩社員や上司はどのように在るべきか」を話し合う
「自分が新卒社員だった時に出会った先輩や上司はどんな人たちだったか?」「新卒社員が配属されて、あなたの配属部署にどのような良いことがあると思うか?」をそれぞれワークシートに記載していきます。

ワークシートとディスカッションを通して、今までどんなふうに新卒社員と関わっていたのか、どのくらい新卒社員のことを理解しているのか、現状を把握します。また、過去に自分たちが育ってきた環境と比べて不足はなかったのか、どのような環境が新人の教育のために良いのか、考えを整理していきます。

【 2 】1年後の『新卒社員の成長ステイタス』『教育プラン』を策定

▼ 「新卒社員に1年後どうなって欲しいか」をディスカッション
「こんな時にはこんな思考ができるようになって欲しい」「こんな時にはこういう風に振る舞えるようになって欲しい」「ここだけはこだわって欲しい」など、新卒社員における1年後の成長ステイタスの共通認識を持ちます。

▼ 次に「1年後の目標のために、周りは何をするのか」を決める
「トレーナーはこれをやり、このように振る舞う」「上司はこれをやり、このように振る舞う」「部署の○○さんにはこれをやってもらい、このように振る舞ってもらう」というように、新卒社員に対する自分たちの“在り方”を明確にするため、トレーナー・上司・職場の全員ですり合わせします。

▼ 最後に「3ヶ月ごとの段階に合わせた成長目標」を明確にする
1年後の成長ステイタスに到達するために、新卒社員にどのように頑張ってもらうか、入社3ヶ月後・6ヶ月後・9ヶ月後ごとの定量目標・定性目標を設定していきます。

「新卒社員における1年後の成長ステイタス」「各段階の成長目標」が、トレーナー・上司・職場の全員の頭の中にあり、共有されている状態に持っていきました。さらに「周りの社員はどうあるべきか」「どのように新人を支援するのか」その役割を明確にしました。

このようにトレーナーだけではなく職場の全員が「共通認識」を持つことで、新卒社員に向けた接し方や指示・アドバイスが適切なものになっていったのです。

【 3 】3ヶ月ごとに振り返りを実施

教育プランを実行に移した後は、3ヶ月ごとに「新卒社員はどのように成長していったのか」を振り返りました。ここで新卒社員の成果だけにフォーカスし、失敗を注意するようなことがあっては本末転倒です。

「できるようになったことを褒めていたか」「失敗してもいいから頑張ろうと声をかけていたか」「挑戦していることを認めていたか」というように、トレーナーや上司がきちんと評価・指導をしていたのかを常に確認しました。また最初に掲げていた目標を下回りそうな場合は、きちんと目標の修正を行なっているかもチェックしていました。

部下の目標を設定し、モチベーションを高めるための動機づけを行ない、難しい時やつまずいている時は適切な指導をし、頑張りはしっかり褒めて、不足があれば求めるといった評価を行なう。こうした「目標設定」「動機づけ」「指導」「評価」の一連の流れこそが「成長サイクルをつくるマネジメント」なのです。

一つ一つを見れば、当たり前のように思うかもしれませんが、意外とできていない企業や組織は多くあります。褒めていなかったり、挑戦を認めていなかったりすれば、たちまち新卒社員のモチベーションは低下していきます。そのため、振り返りを行なう際は、必ずワークシートを用いて4つの行為を遂行していたかの確認を徹底しました。

こうしたPDCAサイクルを回しながら、同時にトレーナーや上司に向けた研修も実施。「評価の仕方」「動機づけの仕方」など、新卒社員に向けてより良い伝え方ができる状態をつくりました。

結果

OJTスキームの構築により、当初問題視されていた新卒社員の離職率を下げることができました。
さらにOJTのトレーナーを担当していた社員が成長し、続々と上司に昇格したのです。現在では「OJTのトレーナーを担当すること」が「入社3年目の社員におけるステップアップ」として位置づけられるようになりました。トレーナーの経験のある上司が、新しくトレーナーに選ばれた若手社員をサポートする、という良いサイクルが生まれたのです。

結果的に、新卒社員の離職率を下げるだけでなく、既存社員も成長できる仕組みをつくりあげることができました。

実際に行った解決策
  • 人事部・営業部との連携
  • ワークシートとディスカッションによる新人教育への意識醸成
  • 成長サイクルをつくるマネジメントの研修
  • 動機づけの仕方、評価の仕方などを教える研修

リーディングパートナーのコーポレートマークは、電車の「連結器」をイメージしたものです。私た ちは、営業で苦戦する企業を「坂を登っている列車」に見立て、営業における専門知識、ロジック、 ノウハウを使いながら、牽引し、加速させます。